---空間---
「…?」
リビングに入って見ると、あきらかな違和感がひとつ。
さすが、この城にあるものだ、と納得してしまうような。
豪華で大きい黒のソファと、背の低いガラス張りのテーブル。
部屋のデザインと調和して、シンプルな色味でしかなかったハズのソコに。
「…こんなの、いつの間に買ったんスか。」
大人がふたりぎゅうぎゅうに詰め合って、やっと座れるほどの小さな、深紅のソファがあった。
別に高級なモノでもない、むしろ街の古びた家具屋で、端に追い込まれていたモノ。
…何故かソレに惹かれた。
そしてすぐさまその場で購入し、持ち帰った。
僕はコレに、彼と一緒に座れるコトが楽しみだったのだ。
(そのはずだったんだけどなぁ…)
そう心の中でつぶやいて、一際その部屋で目立つ赤を見つめた。
壁にもたれて、腕を組んで。
そうするしかない状況に置かれているから。
「…アッシュ君。」
「なんスか?」
返ってくる言葉。
でもそれは、単なる言葉だけだった。
だって声を返したその相手は、目の前の作業に意識を没頭させている。
「…。」
僕がしたいのは、そう、そりゃあかまってほしい、というのもあるのだけれど。
あの、赤いソファに座っているアッシュ。
そこまではイイ、イイのだ。
だけど、彼はソレの真ん中に、一人で広々と座り込んでいるのである。
コレじゃあ、僕の入り込む隙がない。
ふたりで並んでひっついて、あのソファに沈みこみたいというのに。
(さっきからなんなんだろう…)
視線を感じる。
作詞に没頭しているため、意識はソコに行っているにも関わらず。
それだけひしひしと伝わる強い視線。
「…。」
思考の片隅でなんとなく考える、このソファについて。
きっとスマイルが買ってきたんだろうと容易に予想できた。
調和が取れないこの赤をココに置くのは、ユーリの趣味ではないだろうし。
…もしかして、勝手に座っているのを怒っているのかも。
それならそうと言ってくれればいいんスケド。
結局黙ったままの彼を意識することがなくなったぐらい後。
突然身に起こった感触に、俺は驚いて目を見開いた。
ココに来てから、大分時間が経ってしまった。
ただ突っ立ったまま呆然と見ている訳にも…いかないし。
多少、強引だろうけれど、やるしかないか。
僕は決意して、アッシュの傍によって、見下ろしながら声をかけた。
「ねぇアッシュ、腰だけでも上げて?探しモノしたいんだ。」
「…。」
返事のないまま、けれどアッシュの身体は言葉に反応して動き出した。
腰を宙に浮かせ、器用にも手と意識はそのまま目の前の紙に没頭している。
なんて好都合。
すかさず、開いた空間に僕は横から潜り込んで、彼の座っていた場所へ腰掛けた。
「もうイイヨ。」
かけた声の後、座り込んでくる、彼の重み。
「っ!?…スマッ!」
座って感じた感触で、やっと僕に気付いたアッシュが立ち上がって逃げようとしたところを
僕がすかさず後ろから彼の身体を抱きこんで捕まえる。
「ダーメ。逃げちゃ。」
「何やってんスかー!もうっ。」
じたばたと離れようとするアッシュ。
僕はぎゅっと力を込めて引き寄せて。
後ろから傍の首筋にキスを落とす。
「っ!」
ビクッと反応が返ってきて。
可愛い反応に、僕は満足して、そのまま彼の背中に頭を預けた。
「スマ…っ。」
意識が全く向いてない時に、いつの間にか突然膝の上に乗せられていて。
暴れても逃げれずにいると、次いで首筋に落とされる感触。
つい反応してしまい、恥ずかしさと共に身じろいでいると、そのままぎゅうと抱きしめられた。
俺は大人しく固まる事しかできずに。
「想像してたのとは違ったケド、こんな形でもイイかも。」
むしろコッチのがちょっと満足度が高い、とかなんとか
後ろではぶつぶつとつぶやいている。
「このために買ったと言っても過言ではないからネェ。」
「…やっぱりスマが買ったんスか?」
思っていた通りだったので、あまり驚くこともなく後ろを肩越しに振り返る。
「うん、こうやっていちゃつく為に。」
にっこりと笑って、そんなことを言うスマイルに呆然としている間に
するり、とひんやりした指の感触がお腹を伝って。
「スマ!?ちょっと…。」
俺は慌ててその手を制そうとして。
それでも強引に進んでくる指が、身体をなでる。
「好きだよ。」
耳元から入る、低い、甘い声。
どうしよう。
俺はこの声を聞くたびに、溶けるようになってしまうから抵抗できなくなる。
コレこそ、彼の思い通りじゃないか。
「…見事に功を奏したって感じ。」
ポツリとつぶやくと、アッシュの口から、悔しそうな、呆れたような声が返ってきて。
僕は更に満足して微笑む。
心の中で、僕らを乗せているこのソファに、感謝した。
僕らだけの空間をくれたコトに。
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CC/水月朱斗さまよりキリ番ゲット!で頂きましたv
スマッシュですよ〜vv
もう、甘々ラブラブでどうしようvというカンジです。
自分の場所を取られちゃっても、なんとか作戦通りに、と思考を
巡らせる逞しいスマイルも、そんな彼の思惑に気付いていない
アッシュもかわいすぎます。
そして、膝の上に座らせるあたりがポイントですよね!
だって後ろからなんだってできるじゃ…ゲホゴホ。
リクエストする際にキーワードを書かせてもらったのですが、
自分で考えた単語とはいえ、その言葉が出てくると非常に
うれしいやら恥ずかしいやら…。その部分を読んだ時、
いろんな意味で「キャー!」と思いました。
水月さま、素晴らしいお話を本当にどうもありがとうございました!!